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Channel: WOMAN’S CAREER –就職ジャーナル
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一般社団法人共同通信社

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むらこし・あかね●編集局 社会部 記者。北海道出身。32歳。東京外国語大学欧米第二課程フランス語専攻卒業。2008年入社。在学中は1年間のフランス留学を2度経験。フランス語を生かしながら、社会問題に向き合い続けられる仕事をしたいと共同通信社への入社を決める。現在、夫と1歳半の娘との3人暮らし。

誰よりも早く現場に駆けつける。通信社記者として鮮度の高いニュースを配信

入社試験に「フランス語」という選択肢があったことが、一般社団法人共同通信社に興味を持った理由の一つだった。学生時代、フランスに2年間留学し、フランスで就職することも考えていたという村越さん。勉強してきたことを生かせる仕事を…と考え、海外支局の多い通信社、中でも「フランス語」という自分の強みを見てくれる共同通信社への入社を決めた。

 

2007年の秋に大学を卒業し、翌年の2月に入社。東京本社の社会部で電話番や取材同行などの実地研修を経て、4月からは月島研修センターに泊まり込み、1カ月研修に参加した。

「ニュース記事とはどのように書くのか、どんなネタならニュースになるのかといった記者の基本を学んでから、仙台編集部に配属へ。警察担当として、警察署に毎日通い関係性を築きながら、事件が起これば記事にしていくという記者生活が始まりました」

 

国内、海外のニュースを取材、編集して全国の新聞社、NHK、民間放送局、海外メディアなどに配信している共同通信社。新聞社のような“紙面”を持たない通信社には、朝刊・夕刊ごとの締め切りがない一方、ニュースをいち早く各メディアに伝える「速報性」が必要になる。新聞社や放送局の記者が、共同通信社の情報を基に迅速に取材を進められるようにするという、いわばメディアの中枢としての役割を担っているのだ。

誰よりも先に現場に駆けつけなければならない――。村越さんがそれを痛感した出来事は、入社1年目の08年6月14日のこと。宮城、岩手県内で最大震度6強を観測した、「岩手・宮城内陸地震」だった。朝8時43分に大きな揺れを感じ、記者という立場を忘れしばし呆然としてしまったという村越さん。会社に到着したころには、発生から1時間以上たっていたため、「会社に来るのが遅すぎる」と上司から初めて声を荒げられたという。

「赴任して初めての大きな出来事で、騒然とした社内を見たのも初めて。そもそも、限られた人員で、一人ひとりが迅速に、自主性を持って動かなければ、事態を把握して速報を出すことはできません。誰よりも先に正確な情報を発信する担い手であることを、実感した出来事でした」

 

09年に宮崎支局に異動。翌年春から夏にかけて流行した口蹄疫(※こうていえき)取材に奔走した。

「感染が見つかった当初はそこまで大きな問題になるとは予想していませんでした。しかし、感染はあっという間に広がり、どうしたら感染を止められるのかがわからないという状況で、畜産農家の方たちはどんどん家に閉じこもるようになっていきました。現場で話を聞きたくても、外部の人間が農家に入ることで感染が広がると嫌がられ、直接会って取材することすら難しい毎日。そこで、電話によるアンケートで『畜産を再開できそうか』といった現状調査をしたり、ブログで情報発信を続けている農家の方を見つけて取材を申し込んだりと、自分なりに取材の糸口を見つけていきました」

※家畜伝染病の一つ。高い伝播性と致死率があり、感染がわかった家畜は、感染拡大防止のため殺処分が義務づけられるため、農家に甚大な経済的被害をもたらす。

 

中でも、都会から宮崎の農家に嫁いだ女性が、口蹄疫での牛の殺処分を経てなお「またはじめから、頑張って牛を育てていく」と前向きに語った記事は、一般紙の社会面に掲載され、読者の声も多く寄せられたという。

「紙面に載った記事に対して、読者から反響があった時が、記者として最もうれしい瞬間ですね。新聞を持たない通信社では、読者の声を直接もらうことは多くありません。一面や社会面といった影響力のある紙面を飾り(共同通信社の記事配信を受ける)加盟紙を通じて反響を知ることが、大きなモチベーションになります」

 

その年の夏に、フランス人の夫と結婚し、フランスと日本との別居婚を続けてきた村越さん。入社6年目の冬から約1年半、産休・育休をとり、15年4月に復帰。現在は東京本社の社会部記者として、9時半から17時半の勤務を続けている。

「娘が生まれたことで、24時間いつでも現場に駆けつける、という臨戦態勢をとることは難しくなりました。でも、ワーキングマザーの記者は多くいますし、子育てと仕事の両立のための『両立支援室』に働き方を相談できるなど、仕事を続けるためのサポートもあります。現在は、社会部の“遊軍記者”として本社を足場に、ときに担当省庁を持つ記者をサポートするため記者会見場に向かったり、興味を持ったテーマをデスク(編集者)に相談して取材を進めたりと、特定の担当を持たない記者業を続けています」

15年5月には、市町村議会など地方の女性議員のための産休制度がようやくできるとの記事を配信し、一般紙の一面を飾った。今も、地方議会における女性議員の働く環境について、継続的に取材を重ねている。

 

「細く長く、記者として働き続けたいです」、そう淡々と話す村越さんだが、今後実現したいことを聞くと、入社当初からの思いを語ってくれた。

「記者としてはまだ学ばなければならないことがたくさんあります。その点、いろんなテーマで取材ができる今は、自分の興味や知識の幅を広げられて本当に楽しい。そしてせっかく大学でフランス語を勉強したので、フランス語を生かして、いつか海外支局で働きたいという夢も持ち続けています。お子さんと一緒に海外支局に赴任した方もいらっしゃると聞いています。そういう先輩の話を聞くと心強いですね」

 

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地方議会の女性議員の現状について、その分野に詳しい大学教授に電話で取材を進める。

 

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その日に起こったニュースについてのコメントをとるため、関係者に取材する。“遊軍記者”は担当を持たないゆえ、さまざまな案件の取材サポートを頼まれる。

 

村越さんのキャリアステップ

STEP1 入社1年目、仙台編集部に配属される

4月から月島(東京都中央区)にある研修センターに1カ月泊まり込んで、記者研修に参加。共同通信社には、記事を書く編集局のほか、ニュース映像を撮って国内外のメディアに配信するビジュアル報道局もある。動画や音声を撮りニュースとして紹介する研修も行い、どのような素材・ネタがあればニュースになりうるのかを学んでいった。5月からは仙台編集部で警察担当に。6月に発生した「岩手・宮城内陸地震」では、土砂災害の恐れから避難所での生活を余儀なくされた被災者への取材を主に担当した。「指示されたことをやっているだけでは、刻々と変わる現状に対応できません。どこへ行ってどんな人に話を聞けば記事になるのか、自らの頭で考え行動しなければならないと自覚しました」。

STEP2 入社2年目、宮崎支局に異動

宮崎支局では、東国原英夫宮崎県知事(当時)に関するニュースや、新燃岳(しんもえだけ)の噴火、口蹄疫の大流行など大きな出来事が重なり、多忙な毎日に。「通信社は、どのメディアよりも早く、正確な情報を発信する役割を担っています。記者会見に出るときも、ある程度の内容がわかった時点で、会見中から記事を書き始め、すぐデスクに送信することもあります。“速報”としての価値が求められるので、記事自体は短くてもいいから正確な情報を素早く出さなければいけない。記者が数名しかいない支局勤務で、そのスピード感を鍛えられました」。

STEP3 入社4年目、京都支局に異動

京都支局での1年目は京都府警察署を担当。登校中の小学生の列に暴走車が突っ込み3人が死亡、7人が重軽傷を負う悲惨な事件が発生し、捜査の進捗を取材しながら、けがをした子どもの家族にもお話を聞いた。その後府庁担当を経て、大学担当に。ノーベル医学生理学賞を受賞した山中伸弥教授率いるiPS細胞研究などの取材に携わった。

STEP4 入社6年目、1年3カ月の産休・育休を経て、入社8年目の2015年4月に東京本社・社会部記者として復帰

フランス人の夫と日仏で別居婚を続けていたが、夫が東京で仕事を見つけて来日し、その後妊娠、出産。現在は、保育園の迎えの時間に合わせて17時半に退社する。「深夜や早朝でも現場に駆けつけるといった動きはできませんが、興味あるテーマに取り組んで取材を続けられるのがうれしい。記者の仕事はこれからもずっと続けていきたいですね」。

ある一日のスケジュール

6:30 起床。家事、身支度、娘を起こす。
8:00 娘を保育園に送り届け出勤。当日やることを電車の中で整理する。
9:30 出社。
10:00 電話取材。地方議会の女性議員に関する問題を大学教授にヒアリング。
11:00 原稿執筆。
13:00 ランチ。
14:00 デスクからの指示で記者会見に出席。会見後すぐに記事を作成、デスクに送る。
17:30 退社。保育園に迎えへ。
20:00 娘にご飯を食べさせ、寝かせる。その後、夫と夕食。
24:00 就寝。

村越さんのプライベート

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平日の食事は簡単に用意できる時短メニューばかり。その代わりに、イベント時には料理に気合いが入る。娘の初節句メニューはちらし寿司、生春巻き、ハマグリのお吸い物など。

 

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夫婦間はフランス語で会話。1歳半の娘には日本語で話しかけ、家庭内には常に2言語が飛び交う。

 

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学生時代に2年暮らし、友人も多いフランスに育休期間を利用して帰省。夫の実家があるフランス南部で約1カ月過ごした。

 

取材・文/田中瑠子 撮影/早坂卓也

 


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