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Channel: WOMAN’S CAREER –就職ジャーナル
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株式会社村田製作所

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こみや・じゅんこ●営業本部 営業企画部 販売推進課 スペシャリスト。京都府出身。40歳。京都大学文学部文学科卒業。2000年入社。現在、夫と5歳の娘と3人暮らし。

中国語を生かしてモノづくりに携わりたい。その思いをかなえた

ファンクショナルセラミック(※1)を主力製品に、パソコンやスマートフォンなどで使用される電子デバイスの研究開発、生産、販売を行っている村田製作所。海外販売比率は9割を超え、世界70以上の生産・販売拠点を通じて世界中のメーカーの最先端技術を支えている。

(※1)人為的な処理によって作られた、非金属の無機物から成るセラミック

 

小宮さんが製造業に興味を持ったのは、大学卒業後のことだった。大学4年時、流通会社に内定していたが「本当に行きたい道なのか」疑問を抱き、内定を辞退。専攻していた中国語を学ぶべく、中国・南開大学への留学を決めた。現地で日本の大手電子部品メーカーの工場でアルバイトをしたことが、モノづくりの世界に関心を示すきっかけになったという。
「工場の総務部に配属され、現地の工場長や、駐在している日本人の社員にとてもよくしていただきました。製品ができていく過程、ラインの動かし方などを間近で見て、スケールの大きさにひかれましたね。総務部長とローカルスタッフの間で通訳業務を担当することもあり、文化の違いを認め合いながら議論を重ね一つのモノを作っていく、組織運営の難しさと面白さを感じることができました」

 

帰国後、中国語と英語のできる人材を募集していた村田製作所に第二新卒として入社。海外営業部に配属され、販売が進んでいる案件の進捗管理や月報の作成などを担当しながら、村田製作所が扱う製品群、仕事の進め方を覚えていった。
「海外に販売される製品の多くは、各国の販売拠点から現地のお客さまに届けられます。しかし中には『日本法人で一括して村田製作所の製品を買いたい』『日本と直接やりとりしたい』という要求もあり、海外営業部はそんなお客さまへの対応をしています。村田製作所では、コンデンサ(電気を蓄積・放出する電子部品)をはじめとする小さな受動部品(※2)から、電源モジュールに至るまで、すべての製品を一人の営業が担当し、お客さまに提案していきます。お客さまのニーズを広くとらえることができる一方、製品知識を広く深く持つ必要があり、最初は周りが話している内容を理解するのも大変でした」

(※2)電子部品の種類の一つ。抵抗器、コイル、コンデンサなどがある。

 

中国語を使って仕事がしたいと思っていた小宮さんの転機は、入社半年後に訪れる。中国・蘇州に主力製品・セラミックコンデンサの製造工場立ち上げが決まり、そのプロジェクトに携わることになったのだ。工場立ち上げには、設立のための環境アセスメント文書(※3)の作成、約款(やっかん※4)や関連書類の手配、現地でのスタッフ採用の準備などさまざまな業務が発生する。小宮さんは語学力を買われ、配属の1カ月後には現地に出張。工場スタッフの採用面接に同席し通訳を担当したほか、建設途中のコンクリート打ちっぱなしの工場で、現地の役員の方と商談したり、スタッフにおいしいお弁当を用意するため、弁当業者を探して試食したりと、工場設立に必要なあらゆる準備に追われた。
「中国語という強みがあったことで、スタッフ採用という責任ある仕事に携われたのは貴重な経験でした。その時面接した方が、今も村田製作所の販売拠点で働いていて、人の人生にかかわれた喜びを感じています」

(※3)大規模開発事業などによる環境への影響を事前に調査し、その結果や評価を記した文書

(※4)不特定多数の利用者との契約を定型的に処理するために作成した契約条項

 

2年間の立ち上げ業務ののち、結婚を機に京都本社勤務から東京に転勤し広報を担当。製品カタログやWebサイトの作成のほか、中国語の製品カタログ作成、中国の展示会への出展を企画し実行に移していった。
「製品カタログは、細かな情報をミスなく掲載するため、確認作業が大切な仕事でした。“ミスなく”という苦手な仕事に悪戦苦闘しつつも、『もっと中国語を生かした仕事ができないだろうか』と考えたのが、中国語のカタログ作成と展示会への出展でした。展示会では現地の販売拠点のスタッフと協力しながらお客さまに対応。ほかにも、展示物を持って、大学のある地方都市に行き、ホテルの一室を小さな展示会場にして学生の採用のためのPR活動を行ったことも。企画提案したことを、そのままやらせてくれる会社の器の大きさを感じましたね」

 

現在は、営業企画部の販売推進を担う部門で、世界各国の販売拠点と連携しながら、製品の供給状況の整理と分析を担当している小宮さん。スマートフォンの高機能化により、電子部品の需要が高まる昨今、世界中のスタッフとメールや電話でやりとりをしながら、供給先の優先順位づけに追われる毎日だ。
「中国をはじめ、スマートフォンの部品ニーズは大きく、担当している製品は国内2拠点(仙台と金沢)の工場をフル稼働してようやく供給に追いつく状況です。弊社部品がなければお客さまの生産ラインが滞るため、確実に届けなくてはいけない一方、在庫にも限度がある。各国の販売拠点と『どの商品にどれくらい注文が入っているか』を密に共有しながら、供給先の決定と工場での生産や在庫レベルの調整まで進めていくのです」

 

1児の母として時短勤務を続けながら、午前中はアジアの販売拠点と、午後はヨーロッパの販売拠点とやりとりをする多忙な毎日。だが、世界中のワーキングマザーとコミュニケーションをとれることが、いい息抜きになっているという。
「コミュニケーションは、電話会議のほかチャットやメールで行います。海外拠点で働く現地のスタッフにはワーキングマザーが多く、子育ての悩みを相談したり、ときには愚痴を言いあうことも。『子どもを両親に預けたら甘やかしすぎて困る。お金がかかるけどベビーシッターにしようかしら』などの言葉を聞くと、『世界中どこでもみんな悩んでいるんだな』と視界が開けるんです。世界とのやりとりなので、ヘッドフォンとパソコンさえあれば、自宅で会議に参加できる点も働きやすいです」

 

入社以来、一貫して海外拠点と連携しながら仕事し、「裁量権を与えられ、自ら企画して動く自由さにも恵まれてきたから、引き出しも増えた」と話す小宮さん。
「今度は、私が若手メンバーの引き出しを増やす立場。マネジメントという未知の領域に挑戦したいですね」

 

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東南アジアの販売拠点と電話会議。全世界の状況を共有するとともに、自社製品の需要状況をヒアリングしながら、どのお客さまに何をどれくらい供給すべきか優先順位を決めていく。

 

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供給状況を資料にまとめながら、海外販売拠点からのメールの問い合わせに随時対応する。

 

小宮さんのキャリアステップ

STEP1 入社1年目、海外営業部企画管理部に配属ののち、本社企画部に異動

第二新卒として9月に入社し、拡売案件の進捗管理や月報作成などに従事。半年後に本社企画部で中国工場の立ち上げ業務に携わる。「中国に行く前に、工場全体の動きを理解するべく1週間の国内工場研修へ。製造ラインでどんな業務が発生するのか必死で吸収しました。『通常業務はいいからしっかり学んできなさい』と上司が現場に送り出してくれ、時間をかけてメンバーを教育することへの理解がありがたかったですね」。中国への数カ月に及ぶ長期出張もあったが、学生時代に留学していた経験から、中国と日本の文化や考え方の違いにある程度慣れていたという。「仕切りのないトイレで用を足さなくちゃいけなかった時は『これで、世界中どこでも生きていける』と思いました(笑)」。

STEP2 入社2年目、本社企画部でブラジル工場の運営維持業務に携わる

工場立ち上げ業務以外に、運営維持業務などにも携わった。ブラジル工場では、優遇税制継続施策の策定も担当した。「工場に新しい技術を導入しなければ、税制面の優遇を受けられないという制度がありました。そこで、工場運営を維持するために、今の生産ライン、現地のスタッフを活用して製造できるものは何かをリサーチし、導入を進めていきました。製品知識が少なく、生産開発、商品設計の部門にしょっちゅう話を聞きに行っては『また辻(旧姓)か』と言われていましたね」。

STEP3 入社3年目、東京支社企画管理部に異動し、広報業務を担当

結婚を機に、東京勤務だった夫に合わせて東京支社へ転勤。年に1回更新する製品カタログの編集、校正業務や、Webサイト編集を担当した。「当社が扱うさまざまな商品のスペックが入ったデータベースをメンテナンスし、それを紙媒体にまとめる制作業務を担当しました。Webサイトでは、お客さまが探している製品を検索すると詳細情報が出てくるように、製品データを整理。細かい確認業務は私が最も苦手なことで(笑)、脳を鍛え直されているような日々でした」。

STEP4 入社12年目、1年間の産休・育休取得後、現職

営業企画部販売推進課で、世界各国の営業網を支える。「2011年にフィリピンでセラミックコンデンサの工場が立ち上がった際は、世界中のお客さまに『今後はフィリピン工場から納品させてください』と申し入れをしました。フィリピンから納品できると、供給リスクが低減されるなどメリットが大きいんです。日本製にこだわるお客さまには、工場の監査に直接来ていただいたり、品質を保証するためサンプルを出したりと、要望に合わせて対応していきます」。育児と仕事を両立するために、現在5人のチームメンバーとは、月初めに1カ月のスケジュールを共有し、誰がいつどの仕事を担当するのか決めているという。

ある一日のスケジュール

5:30 起床。朝食と夕食の準備。
7:00 夫と娘を起こして朝食。保育園の送りは夫が担当。
9:00 出社し、夜の間に届いているメールのチェック。
10:00 中国の販売拠点と電話会議。商品の供給状況を説明し、現地の状況をヒアリング。
12:30 社員食堂でランチ。
13:30 製品担当部門/工場を交えての供給対策会議。供給状況がタイトな商品について施策を考える。
15:00 供給状況の分析レポートを作成。
17:00 退社。保育園の迎えは夫が7割担当。
19:00 夕食後、子どもの習い事の宿題を見る。
20:30 入浴、家事など。
22:00 絵本を読み聞かせ、就寝。

 

小宮さんのプライベート

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2015年秋、自宅で子どもと月見団子づくり。「一緒にできることが増えてきてうれしいです」。

 

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2016年1月、勤続15年時にとったリフレッシュ休暇で、家族でスキー旅行へ。

 

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支援しているNGO団体「プランジャパン」のイベントに参加。途上国の女の子の教育支援をライフワークにしている。

 

取材・文/田中瑠子 撮影/鈴木慶子


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